☆ハイローハート
恋の終わらせ方
こうゆう風な恋の終わらせ方を知ったのははじめて

夜

グラウンドへ続く階段の一番上に座って黙って空の月を見上げる彼の前に立っていると、つい今しがた伝えた言葉を取り消したい気分になった

学ランのカラーにかかるロシアンブルーのような毛色の髪

学ランの金ボタンが月の光を吸収して鈍く光っている


「声がスキだよ
歌うように話すところもスキ
歌っているのはもっとスキ」


「ハハ……ありがと」


「芸術家としてのあなたがすごくスキなのに……
一緒にいると独り占めしたくなるの」


――思えば始まりは突然だった


くしゃくしゃのチラシの裏に書かれたライブハウスに足を運んで、ロシアンブルーには見つからないような隅っこで、ライブが終わると腰が抜けたようにその場にしゃがみこんでいた

彼の声の余韻に浸りながらずっとそこから動けずにいると……

“気付いた時には落ちている、それが恋である”

ぬっと目の前に立ちはだかる人

視線をあげるとロシアンブルーは深い瞳の奥にアタシをうつして微笑んでいた


「楽屋に来てくれないからさ
もう帰っちゃったかと思った」

「……気付いてたんだ」

「特等席、用意してるって言ったじゃん」


こんな殺し文句にコロっと落ちる女じゃない

やっぱりアタシは少し寂しかったのかな


人と接していると、言葉に隠れた本心が常にアタシの中に流れ込んできた
知りたくない本音が自然と見えてくる
それを知らなければ、アタシはもっとかわいい女でいれるんじゃないかな……

男の前でぶりっこしたり、かわいいウソをついたり、駆け引きしたり……

きっと恋をもっと楽しめるんだ……ただ純粋に



< 304 / 756 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop