☆ハイローハート
ハイティーン
サリーが家に来たのは、アタシが中学1年生の時だった

彼女はいわゆるストリートキャットではなく飼い猫だったのに、パパの車に乗ってやってきたのである

理由はこう

「パパの事務所で働いている女の子が寿退社することになってね、飼っている猫を保健所に連れて行くというから一緒に暮らすことにしたんだよ」


は?

は?

はあ??


“寿退社=飼い猫を保健所”の意味がわからない

「結婚する男性が動物アレルギーらしい」

パパの追加説明を受けてアタシが思った事は


――男が猫を捨てろといったのだろうか
なら、女は黙ってそれに従うのか?

――女が結婚したいが為に猫を捨てることにしたのだろうか
男はそれに同意したのか?


どっちにしろお似合いカップルかも知れない


飼い主が保健所にペットを持ち込んだ場合、即日殺処分だ


サリーはそのことを知っていたのか

彼女は頭のいい猫だから、100%察していたに違いない

どっかシケた態度を貫くサリーは、人間と必ず一定の距離を保っている

信頼を裏切られた時に自分が傷つかないように防御しているようにアタシには見えた


信じたいのに、信じきれない


彼女はどこかでそんな葛藤をしているのかもしれない

いや、猫だからもともと人間と一定の距離を置いていて当たり前なのかも知れない



「あこ、新しい学校はどう??」

折り目正しくアイロンがかけられたシャツをさらっと着こなした男がアタシの顔を覗き込んだ

なぜ、今アタシはサリーのことを突然思い出したりしたんだろう


現実に目の前に見える彼の顔を見て微笑むと「あ、うん……関西弁の女に出会った」と事実を報告する

「へえ、関西弁の子、俺の友達にはいないな~」

「それが、ハーフでものすごくキレイな顔立ちなのに“あかん”とか“いらん”とか言うからおもしろいの」


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