seen you【短編】
彼の最後の場となったのは、屋上だった。
仲の良かった男子数人にひっかかった制服を取って欲しいと頼まれたんだ。
そのブレザーがあったのはさっき俺が見たところ。
蜜が“シュウがいる”と言っていたところ。
彼は運動神経が良かったが、高所恐怖症だったそうだ。
いつも羨ましがられる彼をちょっと痛めつけるだけだったんだ。
実際、制服は比較的取りやすいところにあって、泣き事を言うような状況にはならなかった。
――だけど、不幸にも強風が吹いた。
ブレザーを取り、友のもとへと戻ろうとした彼は体勢を崩し、安全強化のためにつけられたフェンスにつかまった。
が、それは老朽化のせいでアスファルトから抜けてしまった。
転落死だったんだ。