コスミックダスト-戦塵の宮殿
上り坂に差し掛かったところで、いつも以上に重い自転車に気が付いた。
振り返るとミドリが荷台に乗っていた。 

「なんでオマエが乗ってんねん!!!」

「家、同じ方向でしょ?」

「オマエの家なんか知らん! とっとと降りろ!」

「そんなに怒鳴らないでよ」

ミドリは荷台から降りた。
が、上り坂で一旦停車すると、再スタートを切るのは至難の業だ。
あきらめて自転車を引くことにした。

「のどかだね。大阪にもまだあるんだ、こんな場所」

「それがどないした」

「大自然の香りって感じだよね」 

ミドリは思いっ切り深呼吸をした。

牛が鳴いた。

ここら一帯、牛牧場だ。
深呼吸で取り込まれた大量の空気は、きっと素晴らしい匂いに違いない。

「ねえ、名前教えてよ」

「ホルスタインとちゃうんかいな」

「ホル・・・? 変わった名前だね」

「いいかげんどっか行けよ! いつまで着いてくんのや!」

「一本道だからね」

確かに。

延々と続く坂道を、暫く2人して黙々と歩いた。
学校の連中とこの道をこうして歩いたことなど、入学してから初めてだ。

不思議な気分だった。
 

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