First love~awaikoi~
に雨がたくさん入って、歩いていると
キュッキュッいう。
身ぶるいした。本当に風邪をひいて
しまうかもしれない。
でも、熱だして、ベットで寝てれば、
夫婦喧嘩を聞いていなくてすむ―――。
不意に、雨がピタッとやんだ。
え?―――戸惑った私は、顔を上げた。
雨は降り続いている。でも、
頭にも肩にも、一滴の雨も当たらない。
やっと、誰かが、傘をさしてくれたんだと
わかった。
「大丈夫かい?」
と、その男の人は聞いた。
「すっかりぬれてるね」
「どうも―――すみません」
声をだしてみて、びっくりした。
声がちゃんと出ない。
寒くて、あごが震えている。
「渡るんだろう?」
そう言われて、やっと信号が青に変わって
いることに気づいた。
「はい・・・・・・。」
お父さんよりすごく若いけど、それでも
三十は過ぎているかも。
紺の、ありふれた背広を着ていた。
ネクタイは、お父さんの持っている中の
一本と、よく似ている。
その傘に入れてもらって、私は信号を
渡った。
渡ったところで足を止めると、
「君は、どっちへ行くの?」
と、その人は聞いた。
私は、家の方へ続く、ゆるい上り道へ
目をやって、
「あの先です」
と、言った。