DIABOLOS~哀婉の詩~
僕は、彼女の動きが止まっている間に、弾かれた剣の前まで行き剣を手にして構えた。
『・・・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・君を・・・君を救う方法は・・・ないのか・・・・・』
彼女は剣を落として、頭を抱えながらうなっている。彼女が中で戦っているのだろう。
僕の視界が歪んで見える。いつの間にか瞳には涙が溢れていた。
『・・・僕は・・・僕はどうすればいいんだろう・・・誰か教えてくれ・・・・』
その時不意に彼女の声が聞こえてきた。
『・・・・コ・・・・・ロ・・・・シ・・・・・テ・・・・・』
僕は、驚きを隠せなかった。顔は変わらず鬼の形相だが、とても優しい笑顔を見せて、彼女は呟いた。
『アンネ!!!・・・・・その・・・・その選択しか・・・・ないのか・・・・』
『・・・オ・・・ネ・・ガ・・・イ・・・・』
今度は哀願するような目で僕を見つめ、彼女はそういった。
『・・・・わかった・・・待っていて・・・・今・・・・今すぐに・・・殺してあげるよ・・・』
僕は何かを決意したように、涙を拭いながらそう言った。そして、再び彼女に剣を向けた。
『・・・・もう・・・僕は迷わない!』
そう呟くと僕は、頭を抱えて苦しんでいる彼女のほうへ駆け込んだ。
瞳を閉じると、一瞬が永遠のように感じてきた。彼女の笑った顔、泣いた顔、怒った顔が僕の脳裏を過る。次の瞬間、僕は彼女の首と躰を切断した。こうするしか方法がなかった。使徒は首をはねることが唯一の弱点となるのだ。彼女と逢う前に、闇の住人に聞いておいた。首を失った躰は、力なくその場に倒れた。顔が露わになった首をみて、衝撃が走る。彼女の顔は、僕が愛したあの優しい顔に戻っていたのだ。どこか安らいだ顔をしている。僕の視界が再び歪んでいく。溢れる涙を止めることができなかった。
『・・・・・アンネ・・・・・』
僕は、彼女に歩み寄り、彼女を抱えた。
『・・・ありがとう・・・・・・』
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