DIABOLOS~哀婉の詩~
甘い夢のような日々
初めて見たものはバイオ液の緑色が視界を覆い、うっすらと見える白と黒の仮面の者達。それ以前の事は何も覚えていないの。初め、私は此処で誕生したと思っていた。でも、違うみたい…みんな、母親がいて、父親がいて。二人が愛し合って、自分達が産まれてきたんだって。愛し合う…愛を忘れてしまった私に人を愛する事ができるのかな…私は母親、父親に愛されていたのかな…自分自身の過去の事が知りたい。幼い頃は、いつもそう考えていた。
そんな私でも愛する人ができたんだよ。きっと、記憶はないけれど、躰が覚えていたのかな。確証はないけれど、きっと私は両親に愛されていたんだ。そう思うことにした。

瞳を閉じればあの頃の楽しかった日々を思い出す。今思えば貴方に出逢ってなければ、私にかせられた運命に押しつぶされていたに違いない。あれは私が幼くて、自分の事をまだ人だと思っていた頃。その日はどうしても町に行ってみたくて、みんなに黙って一人で町に行った日。初めて行く町に期待を膨らませていた。しかし、町では予想もしていなかった事が起きた。人々は私を怪訝そうな顔でみつめている。周りからは小声でよく聞こえないが、何やら私を見ながら話をしている。まだ私と同じくらいの幼い子供は興味本意で私に近づいてこようとするが、母親らしき人に止められる。その頃の私には額に”Ⅱ”と記されていた。それは私が2番目に誕生した使徒だからだ。我々の年齢は、たいして離れていない。その上、子供の頃はみんな顔が似ていて判別がつかなかったのだろう。だからみな、子供の頃には額にナンバーがふられていた。人々はそのナンバーを見て使徒だと確信したに違いない。その頃の私は、なぜ人々が私を避けるのかが理解できなかった。そう思いながら、周囲を見ながら町外れまで、行ってみた。
そこには、大樹が立っていてその幹のそばに、3人の少年たちがたむろしていた。
年はあの頃の私より幾分か上だ。ふいに少年たちは私に気が付いて、近寄ってきた。
『でこに、数字が書いてあるぜ。こいつ"シト"だよね!』
一人の少年がもの珍しげに私を見ながら言った。
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