DIABOLOS~哀婉の詩~
いつもの丘で僕たちは、自然の中で、空を眺めたり、地に咲く花と戯れたりしていた。毎日の厳しい稽古で、心身共にやつれている僕たちにはこの場所でゆっくりと時を過ごす事がなによりの安らぎであった。そんな時、僕たちをまとめるのがシモンだった。
『シモン、気持ちいいね!』
僕は、透き通るような青の空を見上げながら言った。
『ああ、そうだね。風もとても気持ちがいい。』
『やだなぁ~ここでずっとこうしていたいよぉ。』
『僕もそうさ。何で僕たちは稽古なんてしなくちゃならないんだろう。悪いやつと言うのは、誰のこと何だろう。』
その疑問はいつも、あいつらに投げている問いだった。その答えはいつも返ってこない。僕たちに答えを見いだす術などない。僕はシモンの独り言のような問いをだまって聞いていた。
『…まぁ、考えても仕方ないね。今しなければ、ならないことをやろう。さぁ、そろそろ稽古の時だよ。』
立ち上がりながら、今度はみんなに聞こえるように言う。
『さぁ、みんな。城に戻ろう。』
長姉アンネと次女サンティは花を摘んで、花の冠を造っていた。二人ともそれを頭に乗せ、嬉しそうにこっちに向かってくる。
『見て見て~!どう?キレイでしょ?』
『でしょ~!?』
アンネに続き、サンティも尋ねてきた。
『ああ、悪くないね。お姫様みたいだよ。』
アンネは嬉しそうな顔をして、シモンの胸に飛び込んだ。サンティは首をかしげ、一瞬不思議そうな顔をしたがすぐに、アンネにつられて飛び込んだ。きっとお姫様の意味がわからなかったのだろう。
『おっと、こらこらぁ。危ないよ。』
シモンは少しふらつきながら笑顔で答えた。みんなもその光景を笑いながら見つめていた。みな、シモンが大好きだった。父親などいない僕たちにとってシモンは父親そのものだった。

シモンは幼い頃から、今を"大切に生きよう"と、いつも言っていた。その暖かい言葉に何度、救われてきたのだろう・・・
『そうだよね…シモン……今を生きよう……』
僕はそう呟いたあと、杯を口に運んだ。
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