シュガースパイス
「ちょっ、おい!翔!」
「じゃあな」
俺は足早に居酒屋を後にした。
外に出ると、涼しい風が俺の火照った体を冷ます。
「……帰るか」
俺は呟くと、駅に向かって歩き出した。
――ピリリリッ!ピリリリッ!
ケータイが鳴り出した。
俺はポケットからケータイを取り出し、開く。
……結菜さんからだった。
俺は電話に出た。
「――はい」
『あ、もしもし?新藤くん?』
電話越しに聞こえる彼女の綺麗な声。
「あ…すみません。急に帰ったりして」
俺はとりあえず謝った。
『いいのよいいのよ!あの様子じゃ仕方ないもの』
優しいんだな。
俺は自然と笑顔になった。
『あの…良かったら今から会えないかしら?』
え?
「今から…ですか?」
『えぇ。ちょうど私も帰ろうとしてたから。主人も二次会に行くみたいだし』
俺は胸が高鳴った。
結菜さんが…俺を誘ってくれた。
夢みたいだった。