シュガースパイス
「いいっすよ。」
『本当!?』
「はい。結菜さんの頼みですから」
俺は珍しく冗談を言ってみた。
『ふふっ。もう!新藤くんたら〜♪じゃあ今から駅前のホテルまで来れるかしら?飲み直しましょ』
「はい。分かりました」
――ピッ…
俺は電話を切った。
やった…彼女に会える。
けど…
俺の中では“結菜さんは上司の女”というレッテルが貼られていて…
上司の女に手を出す。
俺はそんな危険なことに手を出そうとしているのか?
――…
そんなことを思いながらも、俺はホテルに向かう。
「――…新藤くん!」
「結菜さん」
ホテルの前には、既に結菜さんが来ていた。
「すみません、待ちましたか?」
「いいえ、私も今来たとこよ。行きましょ!」
結菜さんはニッコリと微笑むと、俺の腕に自分の腕を絡めてきた。
瞬時、ドキッと高鳴る心臓。
でもそれと同時に、課長の顔が浮かんだ。
課長を裏切ったような…
そんな気分がした。