二次元ラウ゛
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「どんな鳥でも、想像力よりは高く飛べない」(寺山修二)  
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 いやらしい光沢を放つミニスカに、ニーハイのブーツを合わせたキャンペーンガールが街頭で新製品のサプリメントを無料配布している。

 「お一つどうぞ〜」と微笑みながら、手渡されたサンプル品に自分を重ねみた。大半の人間に受け取られずに、ようやく居場所を見つけたこいつに同情はするが


…僕はテスターじゃない。


 洗い流したい汚れに成り果てた僕に彼女の酸性の視線が染みた去年の冬の夜。

こんなふうに“是非一度お試し下さい”と人生に記載さえされていれば、誰も傷つくことなく、楽しい記憶だけが時間を満たしてくれるはずなのに、三次元の現実にリセットボタンはない。当たり前だ。それが三次元の、この世界の前提だろう。

にもかかわらず、そんな自明のことを無視して、彼女は二次元の理論を持ち出して、あたかもゲームをやり直す感覚で「ごめんなさい」と姿を消した。

 告白してきたのは向こうからなのに、いざ付き合ってみたらやっぱり別れましょう、なんて、僕との思い出はサプリメントのテスターと同等の価値なのだろうか。


選択の結果、期待した世界が開けなかったなら容赦なく切り捨てる。


僕らが生きる三次元は、そんな二次元の規則に則るものだという止揚のできない現実を社会レベルで隠蔽して、我が物顔でリアルを語る人々が許せない。

 積み木遊びのように恋愛したり、戦争したり…

 そのくせテレビのコメンテーターは何かにつけて二次元を悪者にする。やれアニメの見すぎだ、ゲームのしすぎだと馬鹿の一つ覚えとしかいいようがない。

なあ、お前らにとってリアルって何なんだよ。


矢崎真吾、22歳、無職。あの冬を境に僕は三次元を捨てた。

僕の描いたタイムマシーンもロケットはそこにはなかったから…

馬鹿にするならすればいいさ。
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