死のスケッチブック
泣きそうになるのを必死で堪え、コンクリートの山道を走る。

山の中腹に位置する公園に着き、周囲を見回す。

しかし実花の姿はどこにもない。

「ここじゃないのか?」

それとも考え直してくれたのだろうか?

淡い期待が胸の中に生まれた時だった。

 どすんっ。

…何かが、落ちた音が下から聞こえた。

続くのは人の重なり合う悲鳴。

真名は目を見開き、震える足を動かす。

景色が目の前に広がる。

そこには手摺があった。人が落ちないようにと、付けられたものだった。

この手摺の向こうは、すぐに下になっているから。

落ちたら、ただでは済まないから…。

真名は手摺を握り締め、下を見た。

「実花…」

変わり果てた親友の姿を見た途端、真名の眼からは涙が溢れ出た。
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