死のスケッチブック
確かに魅弦は絵の感想を、一度も言ったことは無かった。

「それでも、何故勧めたりした?」

「それがウチの商売ですから。…ああ、それとですね」

魅弦はにっこり笑うと、いきなり真名の髪を掴み、引き寄せた。

「っつ!」

「俺は人間だよ」

ぞっとするような低い声で、間近で言われた。

「こういういわく付きの物を扱っているけどさ。ちゃんとした、立派な人間なんだよ」

「…ああ、だろうな。でなければ、こんな店の店主なんてやれないだろう」

いわく付きの代物を作り出し・生み出すのは人間。

それを扱えるのも、また人間しかないのだ。

憎しみを分かり、持つ人間しか、扱えない。

真名は髪を掴んでいる手を、強く握った。
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