死のスケッチブック
「なら何故私をこっち側に引き込む? 最初から見知らぬ顔をしていればよかっただろう」

「…退屈だったからだよ」

ぱっと手を離すと、魅弦は肩を竦めた。

「俺は店番だからな。売った物がどうなるか、結末を知ることはできても、見ることはできない。ちょうどヒマだったし、アンタに付き合おうと思ったんだよ」

真名は痛む頭を押さえながら、笑みを浮かべた。嫌な笑みを。

「酷い男だな、お前」

「俺よりアンタこそ、何もんだよ?」

「私は普通の人間だ」

「へぇ。でも『真名』なんて名前、普通は付けないよな?」

真名の笑みが、一瞬崩れた。

『真名』の意味、それは『真の名が無い』という意味だ。
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