道摩の娘
りいは即座に間合いをつめ、素早く打ち込んだ。
りいが最も得意とする攻め方である。
直前の苛立ちのせいか、迷いはなかった。
だが晴明も簡単には触れさせない。
すっと身をかわすと、印を切った。
途端、晴明が何人にも増える。
(幻術か…)
幻術とはわかっても、しかしどうする術もない。
りいは何人もの晴明たちを見渡す。
もちろん本物がどれかなどわかるわけはない。
麗しいが少し気味が悪い、などと呑気な感想を持っただけだ。
「ならば…全員叩いてみるまでだ!」
りいは跳躍した。
跳躍の勢いを乗せて一太刀。
返す刀でもう一太刀。
さらに踏み込んで回し蹴りを放つ。
晴明の分身たちは、大した手応えもなく消えていく。
まわりから歓声や拍手があがった。
(見せ物か、私はっ!)
そちらに気を取られた瞬間――
「あーあ、何むきになってるの」
背後に、晴明の気配が現れた。
「!」
強すぎる、霊力。
本能的な恐怖に、りいの身が固まる。
「わかってるよね?俺はバケモノなんだから敵うわけないって」
耳元で静かに紡がれる声。
「もういい。もうやめなよ」
ひくり、と頬がひきつった。
数日前まで、りいと笑いあっていた晴明が、同じ声でこれほどに哀しいことを言う。
それは…それは、むしょうに腹立たしかった。
からかってはいても、いつも晴明はりいのことをちゃんと見ていた。
それなのに、今、晴明は、りいの気持ちなど全く無視して、幼い頃彼を傷つけた人間たちとひとくくりにしている。
そうだ。
ようやく、この苛立ちの理由がわかった。
りいが最も得意とする攻め方である。
直前の苛立ちのせいか、迷いはなかった。
だが晴明も簡単には触れさせない。
すっと身をかわすと、印を切った。
途端、晴明が何人にも増える。
(幻術か…)
幻術とはわかっても、しかしどうする術もない。
りいは何人もの晴明たちを見渡す。
もちろん本物がどれかなどわかるわけはない。
麗しいが少し気味が悪い、などと呑気な感想を持っただけだ。
「ならば…全員叩いてみるまでだ!」
りいは跳躍した。
跳躍の勢いを乗せて一太刀。
返す刀でもう一太刀。
さらに踏み込んで回し蹴りを放つ。
晴明の分身たちは、大した手応えもなく消えていく。
まわりから歓声や拍手があがった。
(見せ物か、私はっ!)
そちらに気を取られた瞬間――
「あーあ、何むきになってるの」
背後に、晴明の気配が現れた。
「!」
強すぎる、霊力。
本能的な恐怖に、りいの身が固まる。
「わかってるよね?俺はバケモノなんだから敵うわけないって」
耳元で静かに紡がれる声。
「もういい。もうやめなよ」
ひくり、と頬がひきつった。
数日前まで、りいと笑いあっていた晴明が、同じ声でこれほどに哀しいことを言う。
それは…それは、むしょうに腹立たしかった。
からかってはいても、いつも晴明はりいのことをちゃんと見ていた。
それなのに、今、晴明は、りいの気持ちなど全く無視して、幼い頃彼を傷つけた人間たちとひとくくりにしている。
そうだ。
ようやく、この苛立ちの理由がわかった。