秘密


「…あはは…」
「…ふふふ…」


お互い見つめ合い、何となく恥ずかしくて、それを誤魔化すように、同時に笑い出してしまった私達。

「…バイト行かないと…」

「…うん」

佐野君は立ち上がると、私に手を差し出し、その手を掴んで私も立ち上がる。

「今日は彼氏は?一緒に帰らないの?」

「…今日は用事があるって、先に帰ったよ」

「…だから、ここに来てくれたんだ?」

「…うん。鞄も取りに来ないし、心配になって…そしたら佐野君熟睡中なんだもん、起こすのも可哀想で…バイト遅刻しちゃう?」

「ううん、大丈夫、間に合うよ」

「そう…よかった、あ。私先に降りるね?」

「いや、降りる時は危ないから、俺が先に降りる」

「ダメ。私が先に降りるの」

私は慌てて先に降りようとする佐野君を追い越し、梯子に足をかける。

「あっ、危ないって」

佐野君は私の両脇に手を入れ、そのままヒョイと持ち上げて、自分の前に立たせた。

「…俺が先」

どうしても先には降ろしてくれないらしい。

「…だって、佐野君が先に降りたら…見えちゃうかも知れないじゃない…」

「は?見えちゃう?何が?」

「…言わなきゃ、ダメ?」

「出来れば」

私は意を決して、

「…あの…下着が…見えちゃうかも…知れない…から」

「…下着って…あっ。パンツか」

…そんなにハッキリ言わないで、佐野君…

またもや顔が熱くなってしまった。

「あははは。ごめん、そこまで考えてなかった、そっか、見えるかもな?あはは」

「…そんなに笑わないで」

「あはは。ごめんごめん。大丈夫見たりしないから、いや、見て見ぬふりするから」

「…それって見るって事じゃない、やっぱり先に降りる」

再び先に行こうとする私を佐野君は遮って、梯子を降り始めた。

「…お先」

「あっ…」

途端に佐野君の頭が見えなくなった。
下を見ると梯子半分位の所で、佐野君は飛び降りてしまった。

「佐野君っ!膝は?」

佐野君は上を見上げて、

「この位、大丈夫だって、右足で着地したし、普通にしてたらなんともないんだから」

そう言ってニッコリと微笑んで、また私の胸をドキドキさせる佐野君。


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