秘密
そろそろ帰るか、バイトに行かないと。
理科室の窓が開けっ放しになっているのに気付き、窓の方に向かう。
窓枠に手をかけ、三階の理科室の下を何気に見ると、さっきまで俺の腕の中に居た奏の後ろ姿を見つけた。
長いストレートの腰まである黒髪。
歩く度にサラサラと揺れ、何でさっきもっと髪に触れなかったかと後悔した。
明日は絶対触ってやる。
と、くだらない決心を固める。
奏の横に横田佑樹も居る。
俺とは正反対。
真面目な眼鏡君。
結構イケメン。
俺程じゃないけど?
佑樹が一方的に話すのを、奏が横で笑いながら聞いている、と言う様子。
誰が見てもお似合いのカップル。
でも実はお互いに浮気してるんだよな。
まあ、美里は他でも色々やってるみたいだし、俺は浮気って言うか、一応本気な訳だけど。
あれ?何か変か?
はは。まあ、いいや。
一応、彼女って存在がないと、色々面倒くさい事がある。
俺も年頃の男の子?な訳だし。
あっちのほうも色々と…ね?
それにフリーで居ると、コクって来るヤツにも断るのが面倒。
彼女が居るって知ったら、わりと簡単に引き下がる。
たまに引き下がらないヤツもいるけどね、はは。
でも、基本二股とかはしない俺。
エライ?
相手は一人居れば十分。
バイトで忙しいし。
その相手が奏なら言う事ないんだけどね。
また窓の下を見ると、佑樹が奏の肩に手を回し、何やら耳打ち。
……イラッ。
以前ならここまではなかったかもしれないが、無性に腹がたった。
美里ともやってるだろ?
奏に触るな、ボケ。
でも、あっちが本命。
俺とは浮気。
今はそれでもいい。