秘密



学校に着くと、正門はまだ少しだけしか開いていなくて、随分早く着いてしまったと思い、佐野君と顔を見合わせた。

「…やっぱり、早く着きすぎちゃったね?」

「遅刻するよりはマシだ、後一回で欠席だしな?はは」

まだ生徒の姿も見えない校門を抜けて、校舎へと向かう私達。

「…奏にはじめて会った時も、こんな朝だったな」

「ダンクシュートの時?」

「そう、その時」

「私ね?あれから少し佐野君の事探したんだよ、顔、よく覚えてなかったから、バスケ部の練習見に行ったりして…」

でも、佐野君らしき人は居なくて…その内に、忘れちゃって…

「…あの後、暫くして、俺と保健室で話したの覚えてる?」

…あの後?保健室?

「…覚えてない…佐野君と私、話した事あったっけ?」

「あるよ、保健室で、俺が奏の隣のベッドに寝てたの、奏その時腹痛って言ってた…」

「…全然覚えてない…どんな話したの?」

そんな事があったの?
私って…なんて忘れっぽいんだろ?

…情けない。

「…俺と付き合ってって言った」

「えぇっ?嘘!」

「ホント、あっさりフラれたけどね?はは」

…嘘?ホントに?
佐野君に告白された事あるの?私?
……信じられない…

必死に記憶を手繰り寄せようとするけど、全く思い出せない…

佐野君…

その時…私の事好きだったの?
浮気とかじゃなくて、本気で付き合って言ったの?
それとも冗談?

…ああ。ダメだ…頭の中が混乱する。

「…体育館、ちょっと寄ってかない?」

佐野君の声に頭を上げると、佐野君は立ち止まって、体育館を指差していた。

「えっ?う、うん、いいよ。開いてるかな?」

「多分、開いてるだろ?」

体育館に行き佐野君は扉を開けた。

「ほら、開いてた、このガッコいい加減だな、はは」

革靴の砂をマットで払い、佐野君はそまま体育館に入ると、用具室の中からバスケットボールを持ち出し、それを片手に持って、私に手招きしてきた。

「おいで、奏、シュート教えてやるよ」

「シュート?」

「うん。超必殺茜スペシャルウルトラシュート」


……スゴいシュートだね…

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