秘密

「…それとね、土曜日の約束なんだけど…こんな腕じゃ行けないから…ごめんね…」

頭を撫でる俺の顔を見上げる奏。

そう言うと思ってたけど、こんな腕の奏を一人になんてしとけない。

是が非でもうちに連れて行く。

「兄貴に車で迎えに来てもらうから大丈夫。片腕じゃ色々不便だろ?うちに来てくれた方が俺も安心する、それとも来るのが嫌になった?」

「…嫌なんかじゃない、でも、迷惑なんじゃ…お兄さんにまで…」

迷惑なもんか、喜んで来るぞ、あのバカ兄貴は。

ホントは兄貴になんかに頼みたくはないんだげとね…

仕方ない、怪我した奏をバイクに乗せる訳にはいかない。

「兄貴がいちばん奏連れてこいって、しつこいんだ、喜んで来るよ…」

……はぁ。
浮かれる兄貴が目に浮かぶ。

「…佐野君のお家に、また行きたい…リョータ君達にも、県大会頑張って、言いたい」

「決まりな。アイツらも奏が来るの楽しみにしてるよ」

「ホントに?」

「うん。今日は彼女さんは?って毎回聞いてくる、はは」

奏は赤くなり、うつ向いた。

「…私…向こうでは…佐野君の彼女なんだね…」

…その内ホントの彼女にするから。
それまで待ってて。

と言いたい所だけど、今は言えない、恐らくだけど、俺と関わった為に佑樹との間に、何らかのトラブルがあって、怪我したんだろ?

俺達の事は今の所、佑樹には絶対秘密にしなくちゃダメだな。
薄々感付いてはいるんだろうけど…
俺の気持ちには完璧に気付いているはず。

ブッ殺そうかと思ったけど、そんな事したら、ますます奏の立場が悪くなる。

殺すのはまたにしといてやる。
命拾いしたな、佑樹。

「…うん。あっちでは俺の彼女だ」

奏の腕を庇いつつ、優しく抱きしめると、奏も左手を俺の背中に回し、顔を俺の胸に埋めてきた。

その仕種が愛しくてたまらない。

……奏…好きだ。

はじめて見た笑顔は今でもハッキリと覚えてる。

出来れば俺の側で、ずっとあの笑顔で笑っていてほしい。

「…もう行くね?」

「…うん」


そう言いながらも、お互いなかなか身体が離れたがらないのは、奏も同じ気持ちだから?



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