秘密

拓也君と佐野君が出ていくと、美樹ちゃんは部屋の掃除や洗濯とかをやってくれて、私が手伝おうとすると、

「かなちゃんは休んでて!」

とベッドに戻されてしまった。

昼寝してたから全然眠くならないし、勉強しようにも左手じゃ字も書けない…

「かなちゃん、晩御飯、冷蔵庫のもの適当に使うね?」

美樹ちゃんがそう言って部屋に入って来ると、玄関のチャイムが鳴り、私が出ようと起き上がると、

「あたしが出るから」

と美樹ちゃんはまた部屋を出でいく。

拓也君と佐野君、もう戻って来たのかな?
バイクは確かに早いだろうけど、いくら何でも早すぎるよね?
バイクのエンジン音もしなかったし、新聞の勧誘かな?

そんな事を考えていると、部屋のドアが開き、そこに目をやると、

「…佑樹」

「奏…大丈夫か?何で何も言わなかったんだ?学校で櫻井先生に聞いて…驚いた…」

佑樹が近付いてきて、私は思わず身を固くした。

佑樹はさっきまで佐野君が座っていた場所に腰掛けると、私の頬に触れてきた。

瞬間、身体がビクッとしてしまう。

「電話とメールしたけど、返事来ないから…」

「…あ、携帯…鞄の中に入れっぱなしだったから…」

「…いつ、怪我した?あの時、だよな?」

「……違うよ、あの後、階段で、転んだの…」

佑樹から顔を反らして、窓の外に目をやる。

佑樹は両手を頬に伸ばしてきて、顔を近付けてきた。

「…嘘つくなよ、奏…」

佑樹のその顔は笑っていて、私は背筋がゾクリとした。

「…可哀想に、奏…こんな怪我して…痛かっただろ?」

その冷たい笑顔から視線だけでも逃れようと、下を向くと佑樹は更に顔を寄せてきた。

唇が触れるか触れないかの距離。
佑樹は呟いた。

「……これは罰だ…佐野とイチャついてた、お前が悪いんだ…」

「…イチャついてなんか、んっ…」

言いかけて口を塞がれてしまった。

−コンコン…

ドアをノックする音がして、佑樹は身体を離すと、美樹ちゃんが部屋に入ってきた。

「佑樹君、かなちゃんの事は任せといてね?あたし今日はここに泊まるし、あ。明日から、かなちゃんのお父さんが帰って来るまで、うちに泊まってもらうから、ね?かなちゃん?」

< 142 / 647 >

この作品をシェア

pagetop