秘密
「う、うん。明日から美樹ちゃんちにお世話になるの」
そんな約束してなかったけど、私は美樹ちゃんに話を合わせた。
「かなちゃん、ペットボトルも開けられなくて、超不便だし、うちに連れて行くね?佑樹君」
と佑樹に笑顔を向ける美樹ちゃん。
「そうしてもらえると助かるよ、ありがとう、美樹ちゃん」
さっきとは打って変わって、爽やかに笑う佑樹。
「いいのよ、安心してあたしに任せてね。かなちゃんも遠慮しないで、何でもあたしに言ってね?」
美樹ちゃんは佑樹と私の間に割って入ると、私の左手をギュッと握ってくれて、微かに震えていた指先が、その温もりに安心して、次第に震えが落ち着いていく。
「…うん。ありがとう、美樹ちゃん…」
「冷蔵庫にミンチが入ってたから、今日はミートソース作ろうか?」
「あ。玉ねぎあったかな?」
確かお弁当のハンバーグで玉ねぎ使っちゃったような…
…佐野君…
またうちに戻って来るよね?
…今、佑樹が来てるの知らないし、もし鉢合わせたりしたら…
「さっき拓也にメールしといたから、買って来てくれるって、だから大丈夫だよ、かなちゃん」
と美樹ちゃんは私の顔を覗き込んで、佑樹に見えないように、軽くウインクしてきて、握ってくれている手にもう一度、ギュッと力が入る。
それは拓也君と一緒に居る佐野君に、佑樹がうちに居る事を伝えているから大丈夫だよ、と言う事みたいで、私は胸を撫で下ろした。
「…玄関に男物の鞄があったみたいだけど、美樹ちゃんの彼氏のだったんだ?」
「うん。拓也と一緒に学校から真っ直ぐ来たから、あたしんちから着替えとか持ってきてって頼んだの」
「…そうか…アイツが来てんのかと思った…」
「……アイツって?」
呟く佑樹に美樹ちゃんが訊ねる。
「…いや、何でも…」
佑樹はそう言うと立ち上がり鞄を肩に担ぐと、
「帰るよ、美樹ちゃんが居れば安心だし、奏?大人しくしてろよ?まぁ、怪我してるから、大人しくしてるしかないだろうけど…」
「……うん」
最後に佑樹は冷たい視線を一瞬だけ私に送ると、それじゃ、と言って部屋から出ていく。
佑樹が出で行った部屋のドアを見つめて、私は深く息を吐いた。