秘密

美樹の家はバイクで20分位の所だった。

拓也の言う通りにクネクネと裏道を通ると、意外と早くにたどり着いた。
土地勘の無い俺には国道を通るしかなく、拓也が居なければ軽く3〜40分はかかってしまっていただろう。
道路脇にバイクを停めて、拓也はバイクを降りると、美樹の自宅マンションへと向かう。

落ち着いた雰囲気の住宅街にある、レンガ造りの七階建てのマンション。

拓也はよく出入りしているらしく、インターホンで一言二言話すと、オートロックの硝子の扉の中に入って行く。

来る途中で携帯の振動を感じた俺は、胸ポケットから取り出し開くと美樹からのメール。

『佑樹君今帰ったよ』

メールが届いたのが約10分前。
…随分あっさりと帰ったんだな。

『今美樹ちゃんちの前、後30分位したら戻るよ』

返信して携帯を閉じると、拓也が戻ってきた。

「お待たせ〜♪」

拓也の手には何故か50センチ位の熊のぬいぐるみ…

「…拓ちゃん、何それ…」

「ああコレ?タクヤ」

「は?」

「コイツの名前」

拓也は熊を俺の目の前につき出した。

「美樹はタクヤが居ないと眠れないんだよ」

あはは。と笑う拓也。

「…でもバイクだから、どうやって持っていくの?それ結構デカくない?」

「佐野が持ってて」

「はあ?持てる訳ないじゃん」

「大丈夫。こうすれば…」

拓也は俺のジャンパーのチャックを下ろし、その隙間から熊を押し込めると、再びチャックを上げて、熊を俺の腹に納めた。

……百歩譲って良しとしよう。

でも熊の顔が俺の胸元からヒョッコリと出てるのは何故だ?

「おお!佐野。似合う似合う♪」

無茶苦茶馬鹿にされた感がするのは、決して気のせいじゃない。

俺は熊の頭を掴み、中に押し込めた。

「ああっ!何するんだよ!タクヤの顔が潰れちゃうだろ?コレ、イギリス製で高いんだぞ?」

拓也は再び熊の顔を引っ張り出し、

「大丈夫か?タクヤ?顔潰れてないか?」

とタクヤの顔を上下右左と心配気に除き込む。

「よし!大丈夫だ、もう押し込むなよ?行くぞ佐野」

俺は諦め、タクヤを抱いてキーを回し、エンジンをかけた。

……タクヤ、俺と一緒に風を感じるかい?

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