秘密
マンションから5分程の所にある、高級な食材ばかり置いてあるスーパーに立ち寄る。
どうやらこの付近は高級住宅街らしい。
美樹のマンションも高層ビルとかじゃないけど。洒落てて落ち着いていて、緑の木々が沢山ある閑静な佇まいだった。
金髪バイク小僧の俺には、似つかわしくない場所であることには間違いない。
…しかも胸からタクヤが顔を出してるし。
拓也はそんな事気にせず、スタスタとスーパーの自動ドアを通り抜ける。
夕方と言う事もあって、店内は夕飯の買い物をしている、主婦たちで賑わっていた。
果物のコーナーに目をやると、マスクメロンやマンゴー、ドリアン、普段滅多にお目にかかれないような高級果実が陳列されていて、その値段を見て驚く。
果物の相場なんかわからないけど、0が一つ二つ多くね?みたいなふざけた値段が付いていた。
苺が木の箱に入ってて、1万円。
はあ?
苺なんか1パックせいぜい500円位じゃないの?
一粒500円の苺って……
目の前に居た若い男の客が、その高級果実たちを、バンバン買い物カートの中につっこんでいく姿を俺は呆然と見つめてしまった。
…いくら何でも買いすぎだろ?
軽く10万は越えてるぜ?
コイツ、アホだ……
俺の心の声が聞こえたのか、そいつは俺の方を振り返った。
「あれ?茜?何やってんの?こんな所で」
「……カケルさん」
「…てか、その熊…何?」
カケルは俺の胸元を指差した、やはり腕には限定品のロレックス。
「……コイツはタクヤ」
「はあ?」
「カケルさんこそ、何やってんの?それ全部買うの?あんたバカだろ?」
「はあぁ?」
カケルはガクッと肩を落とし、
「…色々ツッコミたいけど、もういいや…俺は店に出すフルーツ買ってんの、この店の品物がこの辺じゃいちばんだからな、俺んちこの近所だし、出勤前の買い出しだよ」
「…なるほど、店に出すフルーツね、だったら大量に買ってもしっかり元は取れる訳だ、ボッタクリな値段つけて」
「…お前、感じ悪いな」
「だってホントの事だろ?」
「まぁ、否定はしないけど?」
そう言ってカケルはにこやかに笑った。
…やっぱり食えない男だ。