秘密
「はじめまして。奥村奏です、初対面なのに、お見舞いまで頂いて、有り難うございます」
奏は丁寧にカケルに頭を下げる。
カケルはカップを手に持ったままの体制で、暫し呆然と奏を見つめていた。
「……あの…」
何も言わないカケルを心配してか、奏が遠慮がちに声をかけると、
「……あ…ああ。はじめまして、カケル、です…いや、あんまり綺麗な子なんで、正直驚いた、ははは…」
「そんな事…ないです…」
カケルはカップをテーブルに置き、俺の方を見て何事か言いたげに手招きしてきた。
「……何?」
俺が近付くとカケルはグイッと首に腕を回し耳元で、
「何あれ?あそこまで綺麗な子?」
「だから言ったろ?死ぬほどって」
「……確かに…その価値あるわ…」
俺達がヒソヒソと話しているのを、奏はキョトンとして見つめていた。
それに気付いたカケルは慌てて手を離すと、いつもの営業スマイルになって、テーブルに置いてあるフルーツの中からメロンを取り出す。
「奏ちゃん、何が好きかわからなかったから、果物ばかりで申し訳ないけど、よかったらみんなで食べてね?」
「はい。果物は何でも好きです、あの、そのメロンって、凄く高いんじゃ…他にもこんなに沢山頂いて…」
「奏…メロンは野菜だぞ?」
「え?野菜なの?」
「うん。瓜科の野菜、1個2万円」
「瓜科って…えぇっ!2万円!」
そりゃ驚くよな。
俺は腹立ったけどね?
庶民な奏の反応に安心する俺。
これが普通の反応だよな、うん。
「…こ、こんな高価な物頂けません…」
「ちなみにこの苺、一箱1万円」
更に追い討ちをかける俺。
「い、1万円?」
「この完熟マンゴー1個5千円」
「!………」
もはや言葉も出ない奏。
ちょっとイジメ過ぎたか…
「あはは。嘘だよ、奏、そんなにする訳ないだろ?」
「…な、なんだ、ビックリした…変な汗かいちゃった…」
手をうちわにパタパタと扇ぐ奏。
「そうそう。しめて5万位だから、そんなに高くはないよ?だから、気にしないで、奏ちゃん」
カケルがそう言うと奏は、
「……ご…5万円…ははは…」
乾いた笑いを出した。