秘密
◇◇◇


みんなで騒ぎながらスイカを食べた。
顔中ベトベトになっちゃったけど、凄く楽しくて。

他の人とこうやって騒いだりしたことが無かった私は、それはとても新鮮で楽しい一時だった。

カケルさんは凄くカッコよくて優しい人で、ホストやってるって聞いた時は少し驚いたけど、こんなに高価な物が買えちゃう程、儲かるホストって言う職業に正直興味が湧いた。

ホントに一度遊びに行ってみようかな?

なんて話を美樹ちゃんとしていたら、佐野君がそれは止めとけって言って、カケルさんに余計な事言うなって嫌な顔してた。

その後みんなで後片付けして、拓也君は今日からバイトを始めるらしく、カケルさんと一緒にうちを出で行った。

二人が居なくなったら急にうちの中が静かになって、さっきまで賑やかだったのに、何だか少し寂しく感る。

「じゃ、俺もそろそろ行くか、美樹ちゃん。後よろしくね?」

最後にダイニングの床を雑巾がけしてくれていた佐野君が、手を洗い戻ってくると、玄関に降りて靴を履く。

「うん。床拭きありがと、任せといて」

「あ、私下まで送ってくるね」

佐野君の後に続いてサンダルを履き、佐野君と外に出る。

外は夕焼けになっていて、アパートの二階から見える住宅地を薄くオレンジに染めていて、少し暖かい風が何処からか運んできた、夕飯の香りが鼻を擽る。

佐野君は通路の手すりに手をかけて、そのオレンジ風景を見下ろしていた。

私も佐野君と同じようにその隣に立つ。

「この匂い…ハンバーグかな?」

言われて鼻を効かせてみる。

「あはは。ホントだ、多分ハンバーグだね?」

「…腹へった」

「あんなに果物食べたのに?」

「果物なんて殆ど水分だ」

「今からバイトなのに、大丈夫?お腹持つ?」

「向こう着いたら速攻何か食わしてもらうから大丈夫、いつもそうしてるし」

「…あの、ごめんね、佐野君」

「え?何が?」

「…暫くお弁当作れないから」

「何だ、そんな事か、少し残念だけど、もしかして奏、俺の事、餌付けしようとしてる?ははは」

…餌付けって。

それに近いものはあるかも…

でも逆かな?佐野君の喜ぶ顔が見たい私は、笑顔のご褒美が欲しいだけなんだよ。



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