秘密


「おはよ、って、何が可笑しいの?奏…」

「佐野君、前髪」

私は近付いてピンを取って佐野君に見せると、佐野君は、

「あ。外すの忘れてた…」

「よく忘れるの?」

「うん。時々、前髪邪魔だな、そろそろ切ろうかな?」

と、前髪を摘まむ佐野君。

「金髪にも飽きてきたし…」

「でも似合ってるよ?何か勿体ないな…」

「そうか?まあ目立ちたかっただけだし、もう目立つ必要も無くなったしな…」

「目立ちたかったの?」

「うん。ある一人にだけね…あ。奏の好きな色に染めようか?今金髪だから何色にでも染めれるぞ?はは」

「…佐野君は赤が似合うと思う。名前も【茜】だし…」

「茜色かぁ…うん。いいかも」

「おはよう!佐野!」

拓也君が佐野君の背中をバシンと叩く。

「…拓ちゃん、痛い…」

「あはは。ごめん、昨日はお疲れ」

「ああ、お疲れ」

「佐野君、おはよう。ほらポチ!早くお弁当選んで、バス来ちゃうよ?佐野君も一緒に行こうよ」

「おはよ、美樹ちゃん、てか、ポチ?」

「拓也の事だよ?何か仔犬みたいでしょ?」

「……言われてみればそうかも、うまいね?美樹ちゃん」

「首輪でもつけようかな?あはは♪」

「首輪、いいねそれ」

「でしょ?」

「ちょっと、二人して俺の事犬扱いかよ!」

「カケルさんに言っといてやるよ、源氏名はポチにしろって」

「誰がポチだ!ほら行くぞ!美樹!」

ポチ君……拓也君は美樹ちゃんの手を引いてお弁当のコーナーへと引っ張って行った。

仲がいいな二人とも。ふふふ。

朝からいつもと違う賑やかさに、口元を綻ばせつつ、みんなでお弁当を選んで、バス停へと向かう。

「あ。今朝カケルさんからメール来たんだよ。今日かなちゃんと二人で店に遊びにおいでって」

「は?美樹お前いつの間にカケルさんとアド交してんの?」

「へ?昨日だよ?赤通してたじゃない」

「知らないよ!」

「まあ、いいじゃない。ね?かなちゃん行こうよ」

「えっ?うん。いいよ…「ダメだから」

いいよ行こうか。

と言おうとしてたんだけど、佐野君に遮られた。

「行ったらダメだから」

もう一度言う佐野君。

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