秘密
「リョータ♪綺麗に撮れよ♪」
石段に、こやかに並んで座るコースケと奏。
ちょっと近すぎないか?
奏…可愛く笑いすぎだろ?
あっ、コラ!奏の肩に手を置くな!
「わかってるよ、撮るぞ?ハイチーズ」
−パシャ。
「撮れた?」
「バッチリ」
「奏さん、ありがとうございました」
コースケは立ち上がり、奏にペコリとお辞儀。
「ううん。いいよ、この位」
……よくない。
賭けに負けてしまった俺は、奏とのツーショットをコースケに奪われてしまった。
コースケのやつ……
あんなに泳ぎが速かったなんて…
……大誤算だ。
やっと岩場に手をついた俺を、岩の上からニヤリと見下ろしてやがった。
……屈辱。
だけど、賭けを撤回する訳にもいかず現在に至る。
コースケはリョータから携帯を受け取り、それを見てニンマリ。
「綺麗に撮れてる♪やっぱ奏さん綺麗だなぁ♪そこら辺のアイドルなんか目じゃねぇよ」
「だよな?見てるだけで癒されるよな?」
「うんうん♪」
「ちょっと見せろ」
コースケから携帯を奪う。
何も知らないやつが見れば、まるで恋人同士のツーショットに、無性に腹が立つ。
「…先輩、何してるんですか?」
「…携帯を逆に閉じたらどうなるかと…」
「壊れますっ!」
俺の手から素早く携帯を取り上げるコースケ。
………ちっ。
「奏さ〜ん♪俺らとも撮って下さ〜い♪」
いつの間にかタケとユウトが奏を挿んで石段に座っていた。
「うん。いいよ、あ。どうせならみんなで撮らない?」
「それ、ナイス♪おい!マサト!お前デジカメ持ってたよな?」
「はい!持ってます!」
「奏さんと写真撮るぞ!みんな集まれ!」
二年のマサトがデジカメ片手に俺に近付いてきて、
「佐野先輩♪お願いします♪」
…は?
俺にデジカメを預け、マサトは石段に走っていく、部員達も集まってきた。
これはどう考えても俺にシャッターを押せと?
「……お前ら〜…」
デジカメを持つ手がワナワナと震える。
「午後から坂道ダッシュ30回っ!」
叫びながらシャッターを押した。