秘密
「コラ!お前ら!海水浴はまだ出来ないんだぞ!」
先生がトングを振り回し大声で叫ぶけど、あいつらの耳には全く入っていない様子。
ザブザブと海に入り、泳ぎ出す始末。
「大会前に風邪でも引いたらどうする!戻って来い!」
全くだ。
仕方ない、連れ戻すか。
……全く世話の焼ける。
「奏、肉見てて、あいつら連れ戻してくる」
「うん」
波打ち際へと向かいズンズンと歩き出す。
−−三分後。
全身ずぶ濡れの俺。
海。サイコー。
「先輩!あっちの岩場まで競争しようよ!」
コースケが向こう50メートル位の岩場を指差す。
途端、俺の闘争心に火がついた。
「…俺に勝負を挑むとはいい度胸だ」
「は!泳ぎなら先輩にだって負けないもんね〜!」
……カチン。
Tシャツを脱ぎ砂場に投げ捨てる。
「…そのセリフ。忘れんなよ?」
「…いいすよ、賭けますか?」
「俺が勝ったらお前、午後から一人でスリー1000本な?」
「う、そうきたか…」
「当たり前だ、スリーシューターはお前だけなんだからな、少しでも命中率上げろ」
「じゃ、俺が勝ったら奏さんとツーショットで写メらせて下さい」
「何だと?」
俺だって奏とツーショットなんて未だに撮ってないのに…
…くそ。絶対負けらんねぇ。
「…いいだろう」
「やり♪おい!ユウト!スタート切ってくれ!佐野先輩とガチ勝負だ!」
ユウトの横に並び、スタートを待つ。
「Ready……go!」
やたらとイントネーションの良いユウトのスタートでレースが始まった。