秘密
猫の入店はいいのか?と一瞬頭を過ったけど、俺の肩に必死に爪を立ててしがみついてる子猫を引き剥がすのもなんだから、そのままコンビニに入った。
深夜のコンビニはガランとしていて、立ち読みの男が一人。
「…いらっしゃいませ」
やる気の無い男のアルバイト店員がチラリと俺の肩を一瞥したけど、それだけで、何も言ってくる様子も無かったので、カゴを持って店内を物色して回る。
「猫ちゃんに牛乳、猫缶はまだ早いかな?」
なんて言いながら、奏はそれをカゴの中に入れると、雑誌コーナーへと向かい雑誌を一冊持ってきて、それもカゴの中へ。
見るとアルバイト情報誌。
「…奏、バイトしたいの?」
「うん。前からやりたかったんだけど、なかなか切っ掛けが無くて、この機会にやってみようかと」
「この機会?」
「猫ちゃんのご飯代位は稼がないと、ふふ…」
「そんな事、気にしなくても…餌代位俺が…」
「私がそうしたいの、だって、二人で飼うんでしょ?」
そう言って笑う奏。
…どんだけ俺の心をわし掴めば気がすむんだ?
明日の朝飯やら菓子類やら飲み物なんかをカゴの中に次々と入れていく。
普通にコンビニで買い物してるだけなのに、奏と一緒にだとそれすらも特別な事のように思えて胸が高鳴る。
「ねぇ?佐野君?」
と、奏が俺のシャツを軽く摘まむだけでも、それだけでドキリとしてしまって。
……俺ってば…乙女かよ…
なんて思ってしまう。
我ながら女々しいと思うけど、それだけ奏の行動に一喜一憂してしまう俺。
買い物をすませてアパートへと帰る。
子猫は今は奏の手の中で小さく丸まっていて。
そんな子猫にさえも嫉妬してしまいそうになって、思わず自分自身に苦笑い。
鍵を取り出しドアを開け部屋に入ると、
「「ただいま」」
同時にその言葉が出てきて、お互い顔を見合わせて。
「「…お帰り」なさい」
二人で笑った。