秘密
買ってきたものを、とりあえず冷蔵庫の中にしまう。
その中から牛乳だけを出して小さな皿に注いでキッチンの床に置くと、子猫は勢いよく牛乳を飲み出した。
身体が小さいわりに皿がデカかったのか、子猫は前足ごと皿の中に入ってしまった。
「あはは、そんなに慌てて飲まなくても誰も取らないよ?猫ちゃん」
奏は子猫の側にペタリと座り目を細めて子猫を見つめていた。
俺はもうひとつのコンビニの袋をテーブルに置いて、部屋の隅に置きっぱなしにしていたノートパソコンの梱包を解きはじめる。
「名前…何にする?」
奏がそう言ってきたので、
「……かなで」
「え?」
「…猫の名前…かなで」
「なんだ、私の事かと思った…でも、かなでって…」
「ダメ?」
「…ダメじゃないけど…紛らわしい…」
…紛らわしいって…
……ちょっとショック…
ナイスな名前なのに…
「それにこの子、男の子だよ?」
なんだと?
奏の胸に顔を埋めてなかったか?
……許せん。
「そうだなぁ…黒猫だから…あえて…シロってどうかな?」
「…シロ?犬みたいじゃね?」
「黒猫なのにシロ、味があっていい名前だと思うんだけどなぁ?」
……黒なのに白…か…
「…うん。悪くない、シロに決定」
「ホントに?よかった。今日からあなたはシロ君だよ?」
床に張り付きシロを覗き込む奏。
もはやシロは身体ごと皿の中に入り牛乳風呂状態。
「あはは。シロってばビショビショ」
「食い意地はってんな、シロは」
「お腹好いてたんだよ、ね?シロ?」
そう言うと奏はシロの頭にキスをひとつ落とした。
………シロめ。
…なんて羨ましいんだ。
またもやシロに嫉妬してしまう俺。
奏とシロのやり取りに嫉妬しつつパソコンをセッティングする。
配線を繋ぎ、立ち上げて設定していく。
このPC…高かったんだろうな…
父さんと兄貴にも何かしてやらないとな。
兄貴は……
あいつはいいや…はは。
来月の父の日にでもなんかプレゼントしてやるか…
勿論奏と一緒に。