秘密
熱くなった目頭から温かい物が流れ落ちて、ぼやけていた視界がクリアになった。
感動して泣いてる場合じゃない。
写真、撮らないと。
コートにデジカメを向けるけど追うのは佐野君の姿ばかりで。
他のみんなも佐野君の動きひとつひとつに釘付けで。
先生達までもが呆然とそれに見とれてしまっている。
普段の佐野君からは想像もつかない、その華麗な動きに沢山の視線が注がれる。
この前、佐野君がやってたリョータ君達との紅白戦とは大違いで、こんなにも声を出し、真剣にボールを追う佐野君の姿に私は胸が高鳴り、指先が震えてしまって、上手くシャッターを押すことさえ出来なかった。
……佐野君。
…やっぱりあなたは…
バスケをやるべき人なんじゃ…
人に教えるよりも、佐野君自身がプレイする事の方が…
心の隅に置いて、見て見ぬふりをしていた気持ちが少しづつこちらに近付いてきて、私の不安を駆り立てる。
私は慌ててそれを再び隅に追いやるけど、一度こちらに来てしまったそれを、完全に消し去る事は出来ずに、心に刺が刺さってしまったような違和感が残った。
その違和感すら消し去ろうと頭を軽く振り、気持ちを入れ替える。
こんなに素敵な佐野君。
その一瞬たりとも見逃したくない……
男子第一試合は私達のクラス、佐野君チームの圧倒的勝利で試合終了。
中央に整列し一礼すると、佐野君は沢山の生徒達に囲まれてしまった。
「佐野!お前スゲーな!」
「スラムダンクかよっ!」
「佐野先輩!かっこよかったです!」
「バスケやってたんですか?!」
「一緒に写メらせて下さいっ!」
「付き合ってくださいっ!」
「いや!むしろ抱いてくれっ!」
揉みくちゃにされる佐野君に、
「おらっ!お前ら!離れろ!次の試合が始められないだろ?質問は茜専属マネージャーの俺を通してからだ!散れ散れっ!」
宮地君が大声を出して、生徒達から佐野君を引き剥がす。
佐野君は髪もTシャツもヨレヨレになっていて、困ったような顔をしていて。
ふと視線をステージでデジカメを向ける私に移すと、爽やかな笑顔を私に向けて小さくVサイン。