秘密
「佐野…いかせろよ…」
「もういっちゃうの拓ちゃん?」
「我慢出来ない…」
「も少し頑張ってよ…」
「ダメだ!いくっ!」
フェイントで俺の左をすり抜けようとした拓也に素早くスティール。
「あっ!くそっ!」
「俺を抜こうなんて、一万年と二千年早いよ拓ちゃん…」
そのままゴールに向かって走る。
ゴール下にはセンターが一人だけ。
イケる。
ジャンプすると同時にそいつもジャンプして両手を付き出しブロック。
身体を後ろに剃らしフェイドアウェイ。
ボールはそいつの掌の上をすり抜けて、放物線を描きながらリンクに吸い込まれ床に落下した。
しかしこの時ボールがリングに入る前に、わざとじゃないだろうが相手が俺の腕を掴んでしまった。
敵のヴァイオレンションによるファールで俺達のスローインから試合再開。
「福田っ!」
ゴール下フリーの福田にパスすると、そのままレイアップ。
福田は俺と同じ位の身長があるから簡単なレイアップならフリーになれば確実に入る。
ボールは敵に奪われた。
「戻れ!ディフェンス!」
そう叫び俺は再び拓也とマンツーマン。
「今度もいかせないよ?拓ちゃん」
俺は低く腰を落とし、ステイ・ロー。
「はっ!そう何度も取られるか、よっ!」
あろうことか拓也は俺の開いた足の間からボールを投げた。
…なんて事しやがる。
やられた方はたまったもんじゃない。
いきなり股間にそんなもの投げつけられそうになったら、男なら誰だってヒヤッとする。
どうなるかって?
ひゅーん、てなるんだよ!
あそこが!
拓也。許すまじ…
俺を本気にさせた事、後悔させてやる。
それからの俺は正に鬼と化し、容赦なく攻め立てた。
気付けばスコアは100点を超えていて、無駄な体力を使ってしまったと後になって後悔した…
でも。
これで決勝進出。