秘密
汗だくになったTシャツを脱ぎ捨てて、新しいTシャツを鞄の中から取り出す。
無駄な体力使ったせいで汗だくだ。
着替え持ってきといてよかった。
「佐野君。みんなもお疲れ様。はいコレ、あたし達女子から差し入れ」
Tシャツから頭を出すと、沢田がペットボトルを俺の目の前に差し出した。
「サンキュ」
受け取り一気に飲み干す。
火照った身体に冷たい液体が染み渡る。
「ぶはー、うめー」
「……佐野君。オッサンみたいだよ」
「…オッサンて…」
沢田は俺の前に座ると、
「佐野君…何か雰囲気変わったね?」
「…は?そうか?」
「うん。いい意味でね、何かこう柔らかくなった?話しやすくなった?みたいな?」
「はは。何だそれ?」
「それ。その顔。よく笑うようになったし、以前の佐野君とは別人みたいだよ」
「…以前の俺ってどんなんだよ?」
ちょっと気になったので聞いてみた。
「以前の佐野君は何か冷たそうな感じで、取っ付きにくいって言うか、ただのタラシと言うか…」
……タラシ?俺はカケルとは違うぞ
まあ、若かりし頃の俺はアレだけど……
「何それ?ヒデー」
「だから、以前だってば、今の佐野君は凄くいいよ」
「…惚れるなよ」
「ばっ!そんな事あるわけない!あたしは他に…」
「…ふーん。で?誰?」
「あっ!沢田!お前の飲みかけ俺にくれっ!一本じゃ足りなくて、後で金払うから!」
貴司がいきなり沢田が手に持つペットボトルを奪い、それをゴクゴクと飲み出した。
「あっ、あげるなんて言ってない!」
貴司を見上げる沢田の顔が真っ赤で、なんてわかりやすいやつなんだと思わず苦笑い。
「え〜?いいじゃん。ケチ、まだ残ってる、返すよホラ、俺買ってこよ」
そう言って貴司はステージから飛び降りた。
ペットボトルをじっと見つめる沢田。
「……飲めば?貴司と、間接キス、出来るよ?」
さらに沢田は赤くなって、
「なっ!何それ?間接…とか!ぜっ、全然気にしてないしっ!」
思いきり気にしてるね?うん。