秘密
ステージの上から次の対戦相手を決める勝敗を見つめる。
その中には佑樹の姿。
恐らく次の対戦は佑樹のクラスだろう。
……佑樹。
こいつはかなりいい動きしてる。
貴司や拓也何かより全然違う。
計算されたプレイをする。
リョータ達と同等位の実力があるな…
三試合連続で、しかもさっきの無駄な体力浪費でこのチームに勝てるか少し不安を感じるけど。
その不安な気持ちさえも俺を高ぶらせる。
絶対に負けない。
…特に佑樹には。
「佐野君?大丈夫?疲れた?」
ステージの袖から奏が心配気にそう言ってきた。
そこからなら佑樹からは見えないからな…
立ち上がり袖に行き、奏を促し袖の階段を降りて用具置き場まで移動した。
跳び箱やらマットやら多少匂うがここなら誰からも見られない。
「…ちょと、ごめん、汗臭いけど…」
言いながら奏をギュッと抱きしめた。
なんか、抱きしめるの、久しぶり。
奏も俺の背中に手を回し、胸に顔を埋めてきた。
奏の暖かい吐息をTシャツ越しに感じる。
「……匂うだろ?」
「…ううん、佐野君の香りがする…」
「はは、どんな香りだよ…」
「…いい香りだよ、安心する…」
「そうか?」
「…うん」
奏の頭に顔を埋めるとふわりと奏の香りがしてきて、安心する香りってこんな香りなんだと思って、奏が言った言葉に納得してしまった。
お互いの香りに安心するって事は、お互いの気持ちが通じあってるって事で、俺だけじゃなく、奏も同じ気持ちなんだと思って、それがたまらなく嬉しかったりして。
「…俺。勝つよ」
「…うん」
「でも…少しだけ不安たがら、勝てるおまじないしてくれない?」
「…おまじないって?」
「キスして」
「…それがおまじないなの?」
「うん」
「………目、閉じて?」
言われるがまま目を閉じると奏の腕が俺の首に回されて、少し前屈みになった俺の唇にそっと奏の唇が触れる。
奏の腰に手を回し、さらに引き寄せ深く口付ける。
ゆっくりと唇が離れると、体育館から試合終了のホイッスルが聞こえてきて、
「じゃ、必ず勝つから、見てて」
「うん。頑張って、佐野君」