秘密


ステージの上から次の対戦相手を決める勝敗を見つめる。

その中には佑樹の姿。

恐らく次の対戦は佑樹のクラスだろう。

……佑樹。
こいつはかなりいい動きしてる。

貴司や拓也何かより全然違う。
計算されたプレイをする。

リョータ達と同等位の実力があるな…

三試合連続で、しかもさっきの無駄な体力浪費でこのチームに勝てるか少し不安を感じるけど。

その不安な気持ちさえも俺を高ぶらせる。

絶対に負けない。
…特に佑樹には。

「佐野君?大丈夫?疲れた?」

ステージの袖から奏が心配気にそう言ってきた。

そこからなら佑樹からは見えないからな…

立ち上がり袖に行き、奏を促し袖の階段を降りて用具置き場まで移動した。

跳び箱やらマットやら多少匂うがここなら誰からも見られない。

「…ちょと、ごめん、汗臭いけど…」

言いながら奏をギュッと抱きしめた。

なんか、抱きしめるの、久しぶり。

奏も俺の背中に手を回し、胸に顔を埋めてきた。

奏の暖かい吐息をTシャツ越しに感じる。

「……匂うだろ?」

「…ううん、佐野君の香りがする…」

「はは、どんな香りだよ…」

「…いい香りだよ、安心する…」

「そうか?」

「…うん」

奏の頭に顔を埋めるとふわりと奏の香りがしてきて、安心する香りってこんな香りなんだと思って、奏が言った言葉に納得してしまった。

お互いの香りに安心するって事は、お互いの気持ちが通じあってるって事で、俺だけじゃなく、奏も同じ気持ちなんだと思って、それがたまらなく嬉しかったりして。

「…俺。勝つよ」

「…うん」

「でも…少しだけ不安たがら、勝てるおまじないしてくれない?」

「…おまじないって?」

「キスして」

「…それがおまじないなの?」

「うん」

「………目、閉じて?」

言われるがまま目を閉じると奏の腕が俺の首に回されて、少し前屈みになった俺の唇にそっと奏の唇が触れる。

奏の腰に手を回し、さらに引き寄せ深く口付ける。


ゆっくりと唇が離れると、体育館から試合終了のホイッスルが聞こえてきて、


「じゃ、必ず勝つから、見てて」

「うん。頑張って、佐野君」


< 245 / 647 >

この作品をシェア

pagetop