秘密
◇◇◇



頑張って。
佐野君。


ステージの上からその姿を見つめる。


ジャンプボール。


佐野君の目の前には佑樹。


ボールが上げられて、二人は高く飛ぶ。


佐野君の身長とジャンプ力に佑樹は叶うはずもなく、ボールは佐野君の掌で弾かれた。


ボールは宮地君の手に渡り、走り出した。


宮地君の前に一人のディフェンス、それを片足を軸に身体を半回転させてボールを生田君へ。


「生田っ!」


佐野君がその横に走り込むと、ボールは佐野君へと繋がれた。


走る佐野君の前に二人のディフェンス、佐野君は腰を落とし、前を見つめたまま真横にボールをワンバウトさせて。


それを宮地君がキヤッチすると、ゴールに向かって全速力。


佐野君のプレイも凄いけど、宮地君はコート全体を走り回りパスを繋ぎ、必ず誰かをフリーにしてくれる。


宮地君が居なかったら、多分ここまで勝つことは出来なかったかも知れないと思わせる程、佐野君と宮地君のコンビネーションは息がピタリと合っていた。


「…佐野君は凄いけど…宮地も…試合重ねるごとに、よくなってる…」


隣に座る沢田さんが、ペットボトルを指が白くなるほど握り締めていた。


「うん。宮地君も凄いよ…」


コートを見つめたまま私はそう答えた。


「あっ!宮地っ!」


宮地君は敵のファールで転倒してしまった。


沢田さんが身を乗り出す。


宮地君は立ち上がり、沢田さんの声が聞こえたのか、こちらに向かって手を降った。


「…よかった…大丈夫みたい…」


沢田さんはホッとしたような、泣きそうな表情で宮地君を見つめていて、


「……宮地、頑張れ…」


小さくそう呟く。


沢田さんにとって宮地君は特別なんだと、私はこの時気付いた。


私も同じたがら。


佐野君が転びそうになったら身を乗り出し、佐野君ばかりを目で追い、心の中で必死に佐野君の名前を叫んで応援してる。


沢田さんにとって宮地君は、私にとっての佐野君なんだ。


わかるよ沢田さん。


私も佐野君が大好きだから。


一生懸命応援しよう。






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