秘密


敵のファールによる宮地君のフリースローから試合再開。


ボールを構える宮地君。


グッと膝を軽く曲げてジャンプしながらボールを放つ。


放物線を描きながらボールはリングへ。


「リバンッ!」


佑樹がそう叫ぶとゴール下のニ人が手を上げジャンプ。


「クソッ!」


宮地君がそう言うと、ボールはリングにあたり跳ね返る。


ボールは敵の手に届く。


かと思われたけど、二人の間をすり抜けるように佐野君の手が伸びてきてボールを片手でキャッチ。


そのまま身体を捻らせて、ボールをリングに押し込める。


沸き上がる歓声。


着地と同時にボールは佑樹の手の中に。


「速攻っ!」


言いながら走り出す佑樹。


佑樹の前に真木君が。


それを交わしてさらに走る。


近付いてくるゴール。


佑樹がシュートを打とうと両手でボールを構えて放つ。


後ろから佐野君がそのボールを叩き落とした。


…戻るの、速い!…佐野君、凄い!


佐野君が叩いたボールはラインの外へ。


佑樹のスローインから再開。


今度は小刻みにパスを繋がれて、なかなかボールが奪えない。


佑樹の手に再びボールが回され、その前にピタリと佐野君が張り付く。


佑樹は両手を使って、右、左、とドリブル。


睨み合う二人。


始めに佑樹が動いて。
咄嗟に佐野君は反応したけれど、佑樹はさらにその逆をすり抜けた。


…佐野君が抜かれた…


私は瞬きをするのも忘れてしまったみたいに、食い入るように佐野君を見つめていて、息が苦しくなる。


「…佐野君、抜かれたね」

沢田さんがそう言うと、

「…うん」

「さすが佑樹君だね…」

「………そうだね…」

「いくら奥村さんの彼氏でも、今は佑樹君の応援しちゃダメだよ?」

私を見て笑う沢田さん。

「……そんな事無いよ…」


ある訳ない。


私の瞳は佐野君しか移らない。


佐野君しか見えない。




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