秘密
前半戦終了のホイッスル。
佐野君は両膝に手をついて、肩で息をする。
かなり疲れてるみたい。
走りっぱなしだもんね…
佐野君はベンチとして用意されたパイプ椅子に戻ると、身体を投げ出すように腰掛ける。
宮地君も他のみんなも同じ。
続けての四試合はかなりキツいみたいで、それは敵チームも一緒で、チラリと佑樹に視線を移すと、佑樹もかなり消耗してる様子。
「あたしドリンク配ってくるね?」
さっきまた買ってきたスポーツドリンクを両手に抱えて、沢田さんはステージを降りて、ベンチに駆け寄る。
私も駆け出したい衝動に駆られるけど、その場からじっと佐野君を見つめる。
佐野君はペットボトルを受け取ると、飲まずに膝に当てていた
……膝。
痛いの?…佐野君…
…大丈夫?
佐野君は私の心の声が聞こえたのか、ふと顔を上げると、視線を私に向けて、
『大丈夫だから』
佐野君の声が確かに聞こえた。
聞き間違いなんかじゃない、佐野君は間違いなくそう言っていて、その言葉に私は少しだけ安心して深く息を吐く。
…でも、無理しないで、佐野君…
佐野君は私に向かって小さく頷くと、ペットボトルを開け一気に飲み干した。
いよいよ後半戦。
スコアは45対40。
佐野君達の5点リード。
まだ逃げ切れる点数ではないし、さらにキツい状況になってくるはず。
佐野君は立ち上がり、コートに向かう。
佐野君は勝ってくるって言った。
佐野君が勝ったら私も勇気を出そう。
いや、佐野君は必ず勝つ。
もうこんな中途半端なのは嫌だ。
私も佐野君に思いきり駆け寄りたい。
そして佐野君本人に大好きって言いたい。
………私。
この試合が終わったら。
佑樹に言おう。
別れてって。