秘密


窓辺に寄り掛かり、ドキドキと脈打つ心臓に手をあてる。


…大丈夫…大丈夫。
きっと…言える。


−ガチャ…


ドアが開く音に、一瞬心臓が激しく跳ね上がる。


「あれ?…奥村…さん?…」

「……あ…」


ドアにの隙間から顔を覗かせたのは、


「……美里…さん」

「…何でここに居るの?」

「…何でって……」

…どうしよう。


なんて言ったらいいのか言葉に詰まっていると。


「…佑…横田君、待ってるの?」

「…うん」


美里さんは部屋の中に入ってきて、パタン、とドアを閉めてそのドアに寄り掛かる。


「……あたしね、茜と別れたの…」


…知ってるよ…他に好きな人が居るんでしょ?

でも、何で私に言うの?


「…そうなんだ…」


そう返すしかなくて私はうつ向いた。


「…あはは…勿体ない事しちゃった、今日の茜ってば、凄くカッコいいんだもん…」

「…じゃあ、何で振ったりしたの?」

「……何で、振ったって思うの?」


…それは佐野君がそう言ってたから…

なんて言えなくてまた言葉に詰まる。


「茜がそう言ってた?」


私はこくりと頷いた。
そうするしか無かったから。


「…奥村さん、茜に好きって、言われた?」

「えっ?何であなが知ってるの?」


思わず口から出た言葉に、言ってしまってから、しまったと思った。

私のバカ!


「やっぱり…言ったんだ…茜…あはは」


笑う彼女に少しだけ腹が立って。


「…何がおかしいの?」

「あ。ごめん…バカにした訳じゃなくて…あたしも茜を…見習わらわなくちゃ…」

「…見習う?…」


彼女は真っ直ぐに私を見て。


「あたしね。佑樹の事が好きなの」

「え?…」

「中1の頃からずっと…茜に、好きなら諦めるなって、言われた…だから、あたし…」


−ガチャ…


再びドアが開かれて、美里さんの身体が少し後ろに下がると、


「…佑樹」

「奏に余計な事言うな…」

「…佑樹、あたし…」

「出て行けよ」


冷たく美里さんを見下ろす佑樹。




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