秘密


美里さんは今にも泣き出しそうな顔になり。


「…あの、佑樹…私」

「お前は黙ってろ」


私が出ていこうかと声をかけようとしたら佑樹に遮られた。


「早く出て行け」


佑樹がもう一度言うと美里さんはくるりと背を向けて、ドアの向こうに出て行ってしまった。


「あっ。美里さんっ」


追い掛けようとした私の腕を佑樹は掴んでドアを閉めた。


「離して、佑樹」

「ほっとけよ、追い掛けてどうするんだ?」


……どうする?…わからない…

…でも、美里さん、佑樹の事が好きって…
他に好きな人が居るって、佑樹の事だったんだ…

しかも中1の時からって…

佑樹の事が好きなのに、何で佐野君と付き合ってたの?

…ダメだ。
頭が混乱してる…


「…だって美里さん、佑樹の事…」

言いかけてハッとする。

佐野君の事…佑樹に聞かれた?

「…だったら何?お前には関係無いだろ?それに、俺が好きなのは奏だけだよ…」


そう言うと佑樹は私を抱きしめる。


……関係無い?
関係無くないよ…佑樹は美里さんの気持ち知ってて浮気してたの?


そう思って私は気付いた。

立場は違うけど、私と美里さんは同じだ…

何で佐野君と付き合ってたのかはわからないけど、浮気でもいいから佑樹の側に居たい…

美里さん……
……私。
あなたと同じだったんだ…


「今日おじさん帰ってくるだろ?」


佑樹はそう言うと私の身体を離して、肩に手を置き、


「おじさん営業部長に昇進だろ?途中入社二年弱で凄いよな、さすが元商社マン」

「え?」

「もしかして、聞いてなかったか?」

「……うん」


……営業部長?昇進?
何にも聞いてないよ…


「今朝話そうと思ってたんだけど、うちの会社が建設した駅前ビル、もうすぐオープンするだろ?オープン前にテナントが集まって完成披露パーティーするらしい、奏もおじさんと一緒に出席しろよ?」

「…パーティー?」

「うちの管理職や重役は全員家族同伴、まあ奏は俺がエスコートするけどな、未来の社長夫人だし」



……管理職…重役…


……社長…夫人?



< 251 / 647 >

この作品をシェア

pagetop