秘密
美里さんは今にも泣き出しそうな顔になり。
「…あの、佑樹…私」
「お前は黙ってろ」
私が出ていこうかと声をかけようとしたら佑樹に遮られた。
「早く出て行け」
佑樹がもう一度言うと美里さんはくるりと背を向けて、ドアの向こうに出て行ってしまった。
「あっ。美里さんっ」
追い掛けようとした私の腕を佑樹は掴んでドアを閉めた。
「離して、佑樹」
「ほっとけよ、追い掛けてどうするんだ?」
……どうする?…わからない…
…でも、美里さん、佑樹の事が好きって…
他に好きな人が居るって、佑樹の事だったんだ…
しかも中1の時からって…
佑樹の事が好きなのに、何で佐野君と付き合ってたの?
…ダメだ。
頭が混乱してる…
「…だって美里さん、佑樹の事…」
言いかけてハッとする。
佐野君の事…佑樹に聞かれた?
「…だったら何?お前には関係無いだろ?それに、俺が好きなのは奏だけだよ…」
そう言うと佑樹は私を抱きしめる。
……関係無い?
関係無くないよ…佑樹は美里さんの気持ち知ってて浮気してたの?
そう思って私は気付いた。
立場は違うけど、私と美里さんは同じだ…
何で佐野君と付き合ってたのかはわからないけど、浮気でもいいから佑樹の側に居たい…
美里さん……
……私。
あなたと同じだったんだ…
「今日おじさん帰ってくるだろ?」
佑樹はそう言うと私の身体を離して、肩に手を置き、
「おじさん営業部長に昇進だろ?途中入社二年弱で凄いよな、さすが元商社マン」
「え?」
「もしかして、聞いてなかったか?」
「……うん」
……営業部長?昇進?
何にも聞いてないよ…
「今朝話そうと思ってたんだけど、うちの会社が建設した駅前ビル、もうすぐオープンするだろ?オープン前にテナントが集まって完成披露パーティーするらしい、奏もおじさんと一緒に出席しろよ?」
「…パーティー?」
「うちの管理職や重役は全員家族同伴、まあ奏は俺がエスコートするけどな、未来の社長夫人だし」
……管理職…重役…
……社長…夫人?