秘密


授業中、机の下でこっそりその写メを見た瞬間、私は隣の席の佐野君を横目でチラリと見た。

佐野君はこちらを見るでもなく、すました顔で黒板を見つめていた。


知らないアドレスだったけど、彼から送られて来たメールだと直ぐにわかった。


彼女の方には見覚えがある。


隣の席の佐野君に会いによく教室にやって来る。


小柄で可愛らしい女の子。

たぶん佐野君の今の彼女。


教室内で人目もははからず、佐野君にベタベタとまとわりついている。


そんな彼女を拒むでもなく、佐野君は無表情で好きなようにさせている。


あまり好感が持てない。


そんな佐野君から突然こんなメールが来た。


私は少し考えて佐野君に返信した。


『知ってる』


佑樹が最近何となく様子がおかしいのはわかっていた。

たぶんまた浮気だろう。

私は相手がまさか隣の席の佐野君の彼女だとは思わず、若干驚いたけど、相手が佐野君の彼女だとわかって、何となく腹がたった。


だって、ねぇ?


あんにベタベタと仲良くしてるのに、浮気するなんて。


佑樹も佑樹だけど、彼女も彼女だ、私が佑樹の彼女だと知っているはず、しかも私は佐野君の隣の席。


そんな事を考えていると、佐野君から返信が来た。


『腹立つから
俺達も浮気しない?』


またチラリと佐野君を見ると、彼は先ほどと変わらず、すまし顔。


私は直ぐに返信した。


『いいよ』


佐野君は私と同じように机の下で携帯を開き、また直ぐに閉じた。


「…放課後。理科室」


佐野君は私にだけ聞こえるようにボソリと呟いた。


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