秘密


ゆっくりと彼は唇を離すと、そのまま私の耳に顔を近付けて呟いた。


「何て呼べばいい?奥村?奏?(カナデ)」


まだ2年に進級したばかり、彼は目立つから私は彼の事知っていたけど、彼が私の名前を知っていたのは以外だった。


「…私の名前、知ってたんだ?」


疑問に思い聞いてみたけど、佑樹が私の彼氏だと知っていたのだから、何らかの形で知っていてもおかしくはない。


「知ってるよ…席、隣だし、奏、美人だし」


何て呼べばいい、何て言ったくせに、名前を呼んでる。

やっぱり軽いやつ。


「…佐野君、お世話上手いね?」

「お世話じゃないよ。ホントの事」

「…だったら浮気なんかされないよ、可愛くないんだよ、私…はは」


私は自虐的に笑う。


「そんな事ないよ?、物静かで知的で美人。俺の周りには居ないタイプ…ホントに来るとは思わなかった…ははは」


「…佐野君も同じでしょ?私達…正反対」


お互いの身なりを見れば一目瞭然。


「はは。ホントだ」


言うと佐野君は再び私を抱き寄せた。

慣れてる。

私はそう思った。


何気なく抱き寄せる手も、耳元でややさく声も。


内心私は胸をドキドキさせ、それを悟られないように必死なのに。


私達はお互いの恋人に、お互いの相手と浮気をされた。


そう。

だから、私達も同じように浮気してやるんだ。


でも、佑樹にはバレないようにしなくちゃ。


これは浮気なんだから。


< 4 / 647 >

この作品をシェア

pagetop