秘密
ゆっくりと彼は唇を離すと、そのまま私の耳に顔を近付けて呟いた。
「何て呼べばいい?奥村?奏?(カナデ)」
まだ2年に進級したばかり、彼は目立つから私は彼の事知っていたけど、彼が私の名前を知っていたのは以外だった。
「…私の名前、知ってたんだ?」
疑問に思い聞いてみたけど、佑樹が私の彼氏だと知っていたのだから、何らかの形で知っていてもおかしくはない。
「知ってるよ…席、隣だし、奏、美人だし」
何て呼べばいい、何て言ったくせに、名前を呼んでる。
やっぱり軽いやつ。
「…佐野君、お世話上手いね?」
「お世話じゃないよ。ホントの事」
「…だったら浮気なんかされないよ、可愛くないんだよ、私…はは」
私は自虐的に笑う。
「そんな事ないよ?、物静かで知的で美人。俺の周りには居ないタイプ…ホントに来るとは思わなかった…ははは」
「…佐野君も同じでしょ?私達…正反対」
お互いの身なりを見れば一目瞭然。
「はは。ホントだ」
言うと佐野君は再び私を抱き寄せた。
慣れてる。
私はそう思った。
何気なく抱き寄せる手も、耳元でややさく声も。
内心私は胸をドキドキさせ、それを悟られないように必死なのに。
私達はお互いの恋人に、お互いの相手と浮気をされた。
そう。
だから、私達も同じように浮気してやるんだ。
でも、佑樹にはバレないようにしなくちゃ。
これは浮気なんだから。