秘密
………お父さん…
お父さんは何も知らない。
お父さんは何も悪くない。
ホントはそんな事わかってる。
でも。
好きな人と幸せそうに笑ってるお父さんが、たまらなく羨ましかった。
出来る事なら私もそうなりたい…
「どうした?奏、メール?」
「え?…うん…お父さんから…」
「…やっぱ、心配してるんじゃない?」
佐野君はドアから離れてベッドに腰掛け、少し下から私を見上げた。
「ううん。違うの、お父さんが悪かったって、楽しんで来なさいって…」
「そっか、よかった、仲直り出来そう?」
「………うん」
私もその隣に座り佐野君から赤外線でカケルさんのアドレスを受けとる。
「7月7日オープンだって」
「え?そうなの?…何で佐野君が知ってるの?」
「カケルさんに聞いた、その日拓ちゃんと行くから」
「拓也君と?」
「うん。成り行きでケーキ奢るはめになった…」
「成り行き?」
「まあ、ゲームに負けたから、はは」
「拓也君、佐野君と反対で甘い物大好きなんだよ」
「みいだな、クレープ三個も食ってたし…見てるだけで胸焼けした…」
「あはは。そんなんでケーキショップとかに来ても大丈夫なの?回りケーキだらけだよ?」
「奏がバイトするんだから、ケーキ位、慣れないと…」
さっきの静さんみたいに腕組して真剣な表情の佐野君。
「シロのお世話はちゃんとするからね、ちょとカケルさんにメールする、昨日のお詫びもしたいし」
言いながら受け取ったアドレスを開きメールを作成する。
『カケルさん、今晩は
奏です。
昨夜はご心配をお掛けしてしまって、申し訳ありませんでした。
アルバイトの件なんですが、美樹ちゃんと二人でお世話になります。
宜しくお願いします。
私の携帯番号です。
090-xxxx-xxxx』
送信して、美樹ちゃんからもメールが来てたから、そのメールを開こうとしたら携帯が振動して、見てみると今メールを送信したばかりのカケルさんからの着信。