秘密
◇第11話◇
◆◆◆



「…母さん…まだ買うの?」


両手両肩に大量の袋を下げて、奏の手を引き俺の数メートル先を歩く母さんの背中に訴えた。


朝奏と買い物に出掛けるからと言ったら、自分も一緒に着いてくると、母さんの運転する車でこのショッピングモールに来たのはいいんだけど。


着くなり母さんはハイテンションで、俺と奏をあちこち引っ張り回し、次々と購入していって、俺は掴みきれない程の紙袋で掌が鬱血してしまいそうになっていた。


紙袋の持ち手って重みがあると食い込んで痛いんだぞ?


「…手が痛いんだけど…」

「何言ってんのよ、あんた男でしょ?それ位で…情けない…」


母さんは振り返り、俺に向かって毒を吐く。


それ位って、おい。
ならお前が持ってみろよ。


と、言いたいのを我慢する。
母さんに逆らったら後が怖い…


「佐野君、私半分持つよ?」


奏が俺の荷物を横から取ろうとして。


「いや、いい、マジで重いから…母さん、一旦荷物車に運んで来るから、鍵貸して?」

「それもそうね?もう直ぐお昼だし…運んどいて?お母さん、ストーンショップに居るから」


鍵を受け取り奏と二人で駐車場へと向かい、車のトランクに荷物を押し込めた。


「…あ〜…痛かった」


掌を見てみると案の定手が真っ赤。
血が通い始め、ジンジンと痺れ出す。


「…見せて?…わあ…痛そう…」

「…痺れてる」

「痺れてるの?」


言いながら奏は俺の手を軽くマッサージ。


……気持ちいい。


「もう大丈夫?」

「…いや…まだ痺れてる…」


嘘だけどね?


暫く奏にマッサージをしてもらった。


「ありがと、もう大丈夫」


グーパーして見せる。


「うん。行こうか?お母さん待ってるよ?」

「いやいや…待ってない、石見てるから後一時間はかかるよ…」

「…そんなに?」

「うん。その間に俺達も買い物しよう」

「…そうだね、本来の目的を忘れる所だった…お父さんにプレゼント…」


奏の手を取り再びモールに向かう。


…やっと手、握れた。


荷物持つより奏の手の方がいい…


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