秘密


とりあえず暫く奏と二人で回るからと母さんにメール。


すぐさま返信が来て、13時に飲食街の寿司屋で落ち合う事に。

それまでは別行動をとることにした。


……昼飯…寿司かぁ…

おっと。いかん…ヨダレが…


「お父さんの好きな物って何?」


頭の中でマグロとイクラが踊っていて、久々の寿司が食えるとほくそ笑んでいる所で奏が聞いてきた。


「へ?…あぁ、父さんの好きな物?…う〜ん…」


…考えてみる。


「……ONE PIECE?…」

「えっ?…お父さん…ワンピースが好きなの?」

「うん。エースが死んだとき号泣してた」


…俺も泣いた……エース…


「………そっちじやなくて…何か、趣味とか…」

「趣味かぁ…ゴルフ?」

「じゃあ、ゴルフ用品店に行ってみようよ」


二階あるゴルフ用品店専門店へと向かい、エスカレーターを上がる。


店内に入ると意外にも若い男女の客が多かった。



「あ。これいい…」


奏が手にしたのは赤いポロシャツ。


「佐野君。ほら、これ可愛い」


可愛いかどうかはわかんないけど。

赤い割りには落ち着いた感じがして、オッサンが着てても違和感無さそうだ。


「うん。いいね、それに決めた」

「え?もう決めちゃうの?もう少し他のも見ようよ」

「そんじゃ、それ、キープって事で」


他にも店内を物色。

サングラスやサンバイザー、グローブ、シューズ。
さすがにクラブは高くて買えない。

軽く素振りしてみたり。


全体を見て回ったけど、やっぱりさっきのポロシャツが値段も手頃。


「やっぱ、これだな?」

「うん。そうだね、私はこれ買う」


奏が見せたのはサンバイザー。


「奏はいいよ…」

「ううん、私も佐野君のお父さんに何かあげたいの」


…そんなに気を使わなくてもいいのに…

とか思うけど、奏はこう言う所は意外と頑固な事を俺は知っている。


「ふふふ、お父さん、喜んでくれるかな?」


そんな顔で渡されて、喜ばないやつが何処に居るかと聞きたい位だ。






< 318 / 647 >

この作品をシェア

pagetop