秘密
咄嗟の出来事に反応出来ず固まる私。
静さんはすりすりと私に頬擦りしてきて。
「もぉ〜っ!何ぞこれ?ニーソとか!萌え死ぬっっ!」
…静さん?…な、なんぞって?
なんか…怒ってる?
「……兄貴、お帰り」
後ろから佐野君の声がして振り向いて見ると、そこには満面の笑みの佐野君が立っていて、その回りから黒い物が立ち上っているような感じがした。
……え?何?…今の…
二三度瞬きして見てみたらもうそれは消えていて、佐野君は私を抱きしめている静さんの腕を捻り上げると後ろに回し、プロレスの技?みたいな形になって、静さんの首を締め上げてしまった。
「…し…しむ…ギブギブ…」
「はあ?聞こえな〜い」
苦しむ静さんは佐野君の腕をパンパンと叩く。
「さっ、佐野君っ、離してあげてっ」
見かねた私が佐野君にそう言うと、開けっぱなしの玄関のドアからお父さんが顔を覗かせて。
「玄関先でプロレスごっこか?相変わらず仲がいいな?ははは、でも邪魔だからやめなさい、中に入れないだろ?」
すると佐野君は腕を離し、何事も無かったかのように。
「あ。お帰り、父さん」
「…ゴホッ、お帰り…父さん、ゴホッ」
「うん。ただいま、あ。お土産、買ってきた、奏さんはシュークリーム好きかな?」
と、ケーキ箱を片手で持ち上げてニッコリと笑うお父さん。
「…あっ、はい。大好きです」
「やっぱり女の子は甘い物が好きなんだな…うちの息子達はこう言うの食べないから…ケーキ屋に入るのちょっと恥ずかしかったけど、買ってきてよかった…」
……お父さん…
「ありがとうございます、嬉しいです…」
「一緒に食べようか?」
お父さんに促されリビングに戻ると、お茶の用意をお母さんと一緒にして、みんなでシュークリームを食べる事に。
静さんと佐野君はさっきまでとは違い、いつも通り普通に会話していて。
ホントにプロレスごっこだったんだ…
男の子の兄弟って、スキンシップが激しいな…
でも、兄弟の居ない私には、それがちょっとだけ羨ましくもあった。