秘密
「奏ちゃ〜ん…ホントに帰っちゃうの?」
玄関先で今にも泣き出してしまいそうな静さんに、私は胸を痛めつつ。
「ごめんなさい、しず…お兄ちゃん、また遊びに来ますから…」
「…うん。今度はお兄ちゃんと一日デートしようね?何でも好きな物買ってあげる♪」
「あはは。はい、わかりました」
「マジ?…やった♪約束だよ?」
「うん。約束」
静さんと指切りしていると、佐野君の手刀がそこに降り下ろされて、指が切れなかった。
「お兄ちゃん、俺とデートしよう、そんで、HONDA.shadow.custom.400、買ってくれ」
「なっ…アホかお前!自分で買え!」
「……ちっ」
舌打ちする佐野君の頭を静さんがグシャグシャとかき回す。
「ま、見に行くだけならいいけど?今度帰って来た時にでも行くか?」
「…うん」
あ。
佐野君、鼻の頭かいてる…
これをやる佐野君はちょっと照れてる時。
ふふふ。
佐野君…ホントは静さんが大好きなんだよね?
いいなぁ、兄弟って…
「奏さん、プレゼントありがとうね。来週コース回るから早速使わせてもらうよ、茜も、ありがとう。遼くんみたいなプレーが出きるかもな?ははは」
「…それは無いから…」
佐野君がボソリと呟くけど、笑うお父さんの耳には入っていない様子。
でもよかった、私達からのプレゼント喜んでくれて。
今日は私も沢山買ってもらって、ホントにこの家の子になったみたいで、凄く幸せな気持ちになった。
でも一番の喜びは、佐野君とのペアブレス。
今も私達の腕が動く度にキラキラと光っていて、その輝きが特別な物に思えて、私はそっと自分の腕のブレスレットを腕ごと掴んで、それを握りしめた。
佐野君。
ありがとう、私、大切にするね。
「それじゃ、ホントにお世話になりました」
ペコリと頭を下げる私にお母さんは。
「またいらっしゃいね?荷物は明日茜のアパートに送っておくから」
「はい。ありがとうございます。また来ます」
佐野君一家に見送られ、バイクで走り出すと、ミラー越しからお父さんが手を振っていてるのが見えて、私はそれに手を振り返した。