秘密
「…そろそろ帰らないと」
私はいつまでも私を離そうとしない佐野君に痺れを切らし、少し強引に彼から離れた。
「え?もう帰るの?」
佐野君は意外だ、と言うような顔で私を見た。
「…帰るよそれは…佑樹とね、佐野君も彼女と帰るでしょ?」
「…う〜ん…どうだろ?」
と曖昧な返事。
「…そう、とにかく私は帰るから…あ、一つ聞いてもいい?」
「え?何?」
何故か佐野君は嬉しそうに聞き返す。
「何で私のメアド知ってたの?」
すると佐野君は少し肩を落として、がっかりして見せた。
何を聞かれると思っていたのだろう?
「…メアドなんて、知ろうと思えばいくらでも知ること出来るよ、今の世の中…」
おそらく友達の友達のとか色々経由して私のメアドを知ったのだろう。
実際知りたくもないアドレスが送られて来る事もある。
「そっか、じゃ、帰るね」
私は佐野君にクルリと背を向け、一歩踏み出したのだけれど、彼に右腕を捕まれ、二歩目が踏み出せず、止まってしまい、さらに腕を引っ張られ、またもや佐野君の腕の中。
「……佐野君、帰りたいんだけど…」
「…うん。わかってる」
佐野君は私の頬に手を当て、またゆっくりと近付けてくる。
キスが落ちてくる。
そう思った私は目を閉じる。