秘密
◇第15話◇
◆◆◆





ビーチバレーも終わりにして、そろそろ海で泳ごうかと、さっきまで美樹の隣に座っていた奏をの姿を探すけど見当たらない。


「美樹ちゃん、奏は?」


美樹はデシカメ越しに俺と拓也を捉えたまま。


「え?あ、飲み物買いに行くって言って、まだ戻らないなぁ、どうしたんだろ?」

「俺、売店見てくる」


踵を返して海の家の方へと足を向ける。


「あっ、佐野君。行くなら、これロッカーにしまってきて、あたし達一足先に泳ぎに行くから、行こ、拓也」


デジカメを美樹から受け取とると、拓也と美樹は手を繋ぎ、浜辺へと駆け出して行ってしまった。


俺も早く奏と海で泳ぎたい。


海の家の表にある売店にも奏の姿は見当たらなくて、中に入り見渡して見ると奥の方の長机に、バスタオルを肩に掛けてボンヤリと一人で座っている奏を見つけた。


ナンパでもされてやしないかと心配だったけど、よかった。

でも、何であんな所で一人で座ってるんだ?疲れたのか?


机と人の間をかき分けて、奏の向かい側に座り、その顔を覗き込む。


「奏?」

「え?…、あ、佐野君…」

「……どうした?具合悪い?…、顔色、悪いぞ?」


顔を上げた奏の顔を見た途端にそう口から出てしまう程、あまりいいものではなく、その額に手を当ててみた。


「…んー…熱は無いみたいだけど、大丈夫か?」


熱中症の初期症状か?
だったら陽の下には行かない方がいいな…


「だ、大丈夫だよ、ちょっと、寝不足なだけだから、全然元気!」


「…ホントに?」

「ホントに大丈夫、久しぶりに運動しちゃったから、少し休んでただけ、もうバレーは終わったの?」

「うん。もう終わりにした、あいつ等全員相手にしてたら体力持たない…」

「ふふ、そうだね。終わったなら泳ぎに行こうか?」

「もう少し休んでた方がよくないか?」

「ううん、せっかく来たんだもん…、時間が、勿体ないよ…」


奏はバスタオルをバサッと広げてそれを綺麗に畳むと、長机をピョンと飛び越えて俺の腕を取り。


「早く行こう、佐野君」

「……お行儀が、悪いぞ?」

「あはは。勘弁して?」




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