秘密
◇◇◇





佐野君はボールをキャッチすると、そのままその場でボールをタンタンと床で弾いていた。


「ユウト、先輩は…」

「リョータ、いいから」

リョータ君が何か言いかけて佐野君が遮った。

「…あ…すいません。つい…」


ユウト君が急に顔を曇らせた。


「リョータ、代えのバッシュ持ってる?」

「あ、はい、でも…」

「大丈夫だって、お前何センチ?」

「29です」

「はは。足までデカくなりやがって、俺と同じじゃん、貸して?」

「…はい。持ってきます」


そう言うとリョータ君は体育館の隅のバックから赤いスニーカーを出してきて、佐野君の足元に置いた。


「サンキュ」


佐野君はそれを履くと、皮ジャンを脱いで私に差し出した。


「奏、持ってて」

「うん。佐野君、シュートするの?」

「…奏に見せてやるよ、多分忘れてるだろうから」

「…忘れてる?」

「見たら思い出してね?」


そう言って佐野君はドリブルしながらコートの中に走って行った。


忘れてる?
何だろ?


佐野君の少し重い皮ジャンを抱きしめながら、佐野君の言った言葉の意味を考えてみたけど、わからなかった。


佐野君はコートの中をドリブルしながら軽く回り、徐々にスピードを上げていく。


走りながらゴールに近付き、ボールをフワリと上げたかと思うと、それはリングに吸い込まれるように決まった。


またドリブル。


次にジャンプしてシュート。

これも流れるように綺麗に入る。


少し離れた所から身体を後ろに反らしシュート。


他の部員達から「おぉ…」と声が上がる。


胸がドキドキしてきた。


なんて綺麗なんだろう。


佐野君の動き一つ一つが洗礼されていて、バスケットの事がよくわからない私にでも彼のプレーは凄いものだとわかる。


佐野君はさらにスピードを上げて走り出した。


……あ。


この光景は……見た事があるような…


佐野君はゴールに向かって高くジャンプ。


−ザシュッ!


リングにボールを叩き込む。
リングにぶら下がる佐野君。


ダンクシュート。


一斉に部員達の拍手と歓声。


……あ……


私……


思い出したよ佐野君……



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