秘密
高校に入学して直ぐの頃。
朝早くから体育館を走る音がして、私は中を見てみた。
そこには1人の背の高い男子が、ドリブルしながら走っていた。
バスケット部はあるけど、朝練なんてしてたっけ?
でも制服着たままだし、早く来すぎて遊んでるだけかな?
私だって早く来てしまって、校内を見て回ってたんだよね。
そんな事を考えながら彼を見ていたら、彼は次々とシュートを決めていき、その綺麗なフォームにいつの間にか私は夢中で彼を目で追っていた。
彼はさらにスピードを上げて、反対側のゴールに向かって走り出した。
大きく助走をつけて、彼は跳んだ。
跳ぶ、と言うよりは飛ぶと言う感じだった。
高くジャンプしたかと思うと、あんなに高い位置にあるリングに上からボールを押し込み、そのままリングにぶら下がった。
……ダンクシュート?
……凄い。
凄い!
私は無意識に拍手して、彼に駆け寄り話し掛けた。
すると彼は何故か後ずさって、そのまま体育館から走って出て行ってしまった。
見ちゃいけなかったのかな?
秘密の特訓とか?
でもあんなに上手なんだもん、絶対にバスケ部だよね。
放課後何度かバスケ部の練習を見てみたけど、彼ほど上手い生徒は居なかった。
バスケ部じゃなかったんだ…
またあのシュートが見れるかと思っていた私は、ちょっとがっかり。
顔もよく見てなかったし、ただでさえ入学したてで知らない顔ばかりだから、覚えていなかった。
……でも。
あの時の彼は佐野君だったんだ。
今まで気付かなかったはず、だってその時の彼は髪も金髪じゃかったし。
忘れてるって、この事だったんだね。
佐野君。
思い出したよ、私。
佐野君はずっと覚えてたの?
私の事前から知ってたの?
何で言ってくれなかったの?
すっかり忘れていた私もどうかしてる。ふふふ。
でも、あの時の彼が佐野君だとわかって、凄く嬉しい。
佐野君がずっと前から私の事知っていてくれた。
佐野君の皮ジャンをさらにギュッと抱きしめる。
「奏…思い出した?」
リングから手を離し、私の方を見て笑う佐野君。
「…うん。思い出したよ」